■ピロリ菌

  日本人の二人に一人が感染しているともいわれる「ピロリ菌」。
このピロリ菌は胃潰瘍や十二指腸潰瘍などと関係していることが分かってきている。この十一月から
検査で胃・十二指腸潰瘍と診断され、ピロリ菌感染が疑われる人の除菌治療が医療保険で受けられる
ようになり、患者にとっては朗報となった。

  ピロリ菌は、最初、胃の出口(ピロルス)で発見され、菌の形がらせん状(ヘリカル)をしている
細菌(バクテリア)ということで、「ヘリコバクター・ピロリ」と名付けられた。ピロリ菌に感染する
のは、通常、乳幼児期で、経口感染する。普通発展途上国の方が感染率が高いが、日本は例外的に、
国民の二人に一人が感染しているといわれている。原因として戦争前後の混乱期の衛生環境が考えら
れ、四十歳以上では約七割が保菌者というデータもある。

 ピロリ菌は胃の粘膜に生息し、炎症などの影響をおよぼす。代表的な病気としては胃潰瘍、十二指
腸潰瘍があげられる。胃潰瘍…胃炎の状態に、ストレスや暴飲暴食などの環境要因が加わり、
胃酸の分泌が活発になると潰瘍が生じる。症状には胃の痛み、もたれ、げっぷ、吐き気、胸焼け、
さらには嘔吐、吐血、下血などもみられる。痛みは食事のすぐ後や空腹時に起こりやすい。
十二指腸潰瘍…分泌された胃酸が胃から十二指腸に流れ込み、十二指腸の壁に潰瘍ができる。若年層に多い。
胃のもたれ、不快感、食欲不振をともなう慢性胃炎もピロリ菌との関係が疑われれている。
ピロリ菌に感染していても、すべての人がこれらの病気になるわけではなく、大半は無症状で、健康体でいられる。
このため、ピロリ菌の除菌治療が必要なのは、潰瘍の再発を繰り返している人に限られる。

 感染の有無を調べる検査には、血液検査、尿素呼気試験、内視鏡検査がある。
血液検査…血液中に、ピロリ菌に対する抗体があるかどうか調べる。
初期的な検査。
尿素呼気試験…特殊な炭素を成分に含む尿素を飲み、飲む前と、十五分から三十分後の呼気を取り、
特殊な炭素の量を比較して判定する。
内視鏡検査…胃の粘膜の組織を内視鏡で採取し、ピロリ菌の有無を調べる。
いずれの検査も通院で受けられるが、検査当日の朝食は抜く必要がある。

  今回医療保険の適用になった除菌治療は三種類の薬を服用する。
抗菌薬…ピロリ菌に直接作用し、死滅させる。「アモキシシリン」「クラリスロマインシン」の二種類がある。
酸分泌抑制薬…胃酸の分泌を抑え、抗菌薬の効能を高める。「プロトンポンプ阻害薬(PPI)」が使用
されている。
  検査の結果、ピロリ菌感染が確認されると、これら三種類の薬を、朝食後と夕食後の一日二回、一週
間続けて服用する。約九割の患者はピロリ菌を除去できる。完全に除去できたかを調べるために、治
療後約四週間の期間をおいて再検査が行われる。